――木の器を作り始めたきっかけは?

以前からアフリカのパーカッションが好きで、「ジャンベ」と呼ばれる西アフリカ伝統の太鼓を、演奏だけでなく自分で作って楽しんでいました。ある日、中古の木工用旋盤が売りに出ていたので、それでジャンベを作ろうと購入しました。ところが機械のパワー不足で、大きな太鼓作りには無理がありました。そこで手元にあった端材でお皿を作ってみたら、近所のおじいさんが「分けてくれ」って…。
そんな声が増えてくるに連れて、これを仕事にしてみようかな、と考えるようになったんです。

―― 器づくりの上でこだわっていることは?

自分の工房に「I.M.A.」という名前を付けています。これは、イマジネーション、マテリアル、アクシデントの頭文字をとったもの。この三角の中に納まった時に、いいものができると考えています。
素材だけに重きを置くと、木目の複雑さだけが主張するようになってしまう。イマジネーションとマテリアルだけなら工業製品としてはよくても、人間らしい個性が出ません。
いつもI、M、Aのバランスを考えながら制作しています。

年輪に教えられる時間感覚

―― 木に教えられることってありますか?

時々、制作に疲れたら、機械を止めて木の年輪を数えることがあるんです。中には樹齢100年というような古木もあって、自分が制作に苦しんでいる時間なんて、何でもないものに思えてくる。また52歳という自分の年齢を木の年輪として考えたら、その木目でいい味が出せることに気付いて、自分も捨てたもんじゃないなと思えます。

―― 木の器の魅力は?

弱いということだと思います。金属の器や陶器より弱いので、傷みも早い。でも丁寧に使えば何十年ともつし、使っているうちに器の色や肌合いなどにも変化が生まれてくる。
そういう変化を使う人自身が発見しながら、大切に使っていただきたいですね。そうすることで愛着もいっそう湧いてくると思います。
また同じ種類の木でも、部位や木目によって、まったく違う表情になります。同じものは世界にふたつとない。それも木の器の魅力です。

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アドリブとアクシデントが器を作る




京都市中京区麩屋町通・御所南 器と切子ガラスのお店「結」
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――制作前に完成のイメージはできているんですか?

いいえ、制作は日記を書くのと同じで、後になってみれば「何であんなことを考えていたんだろう」と思うようなことでも、その時はそこに自分の感性をぶつけている。
器も、その時々の感性のアドリブで制作しています。
また制作中に木の節が出てきたらそこを外したりして、途中で形が変わってきたりもします。それぞれのフォルムは、ある意味アクシデントの積み重ねです。
だからこそ、ひとつひとつ面白いフォルムができるのだと思います。



佐古 馨

Sako Kaoru

1958年 大阪府生まれ
1982年 近畿大学農学部卒

2年間の石垣島生活を経て美術に目覚め、絵画・版画・彫刻の製作を始める。ニューヨークで個展も。
2005年 I.M.A.の工房名で家具・木の器の製作を開始
2008年 伊丹酒盃 コンクール入選

買った旋盤機が趣味の太鼓作りには向かなかった――そんなきっかけで木の器を作るようになったという佐古さん。古都・奈良の工房で、個性的なフォルムが魅力の木の器を制作されています。もともと農業を志すほど自然が好きだったという佐古さんに、木の器の魅力や制作者としての思いなどをうかがいました。

――今後の展望は?

私はもともと農学部出身で農業を志していた人間。芸術や工芸のアカデミズムとは無縁です。ものさしは、独学で身に付けた自分独自の感性しかない。芸術の世界ではアウトサイダーが起爆剤になることがあります。私もアウトサイダーであり続けたいと考えています。