――家具工芸の職人になったきっかけは?

もともと絵画や工作が好きだったので、ものを作る仕事がしたくて、学校を出てから大阪の木工会社に勤めました。自分の仕事は機械を使った量産品の製作でしたが、その工場に年配の腕の立つ職人さんがいて、手作業で家具を作る姿がシンプルにかっこよかったんです。

そこでその人から休み時間に道具の使い方や仕口※の方法を教えてもらうようになりました。そのうち本格的な木工の勉強をしたくなり、工場を辞めて福知山技術専門学校に入りました。将来は職人として独立しようと決意を固めたのです。学校が4時に終わった後は「木と漆の館」(福知山市夜久野町)に通い、漆塗りも勉強しました。大変でしたが、充実した日々でした。

※   しくち。釘を使わずに木材同士を噛み合わせて接合する技術

――木の魅力は?

同じ色や木目の素材は二つとないので、木を見ながら、その木に合った仕事をしなければならない。それが魅力でもあり半面、難しいところでもあります。失敗したらもう同じ素材は見つけられない。一発勝負なわけです。

「木取り」と言いますが、目の前の木をどう使うか見極めるのが一番難しい作業で、熟練すれば簡単になるというものではありません。
節などの欠点が出てうまくいかなくなることもあれば、それがむしろ美しい景色を作ることもあります。そんな偶然性も木の魅力です。
木の癖を読み、削ればどのような木目が出るか予測し、曲線や意匠と調和するよう配置する。そんな領域をめざしたいです。

木目の美しさを出すため、
通常の4〜5倍の塗りと磨きを繰り返す

――独立して初めてのお客さんを覚えていますか?

専門学校卒業後は3年ほど家具会社などで働いた後、独立しました。独立して初めてのお客さんは若いご夫婦で、子供さん用のデスクと本棚の注文でした。

打合せから完成まで初めて一人で手掛けて、納品も直接お届けしたんです。納品の時、お客さんの喜んでくださる顔を見て、とても嬉しかった。半面、何でも自分でやらなければならない大変な世界なんだと思い知らされました。その方とはその後も手紙を頂いたり年賀状のやり取りが続いたりと、永いおつきあいとなっています。

めざすは、偶然性さえ予測するような領域
――制作の上でのこだわりは?

木目の美しさを最大限、表現するために、「拭き漆」という手法を使っています。漆を塗っては磨き、という作業を何回も繰り返す方法です。ただ僕の場合、12回から15回は塗りと磨きを重ねます。木目が特にはっきり見えるよう、これだけの手間をかけています。

フォルムとしては直線も効果的に使っていますが、意味のある美しい曲線にこだわっています。例えば椅子の曲線や曲面も座りやすさやひじの掛けやすさなど、機能性を考えて決めています。クッションはないけど、クッションがあるかのような座り心地を、木だけで実現したいと考えて制作しています。

京都市中京区麩屋町通・御所南 器と切子ガラスのお店「結」

――どんなところから作品のインスピレーションを得ますか?

一番にはいま住んでいる京都府美山の自然ですね。あとは純粋美術も好きなので、クリムトの絵を見てその曲線からインスピレーションを得たりもします。今は異素材に興味があって、作家さんに会う機会があれば、いろいろと教えてもらっています。その中から、例えば磁器を見て今度は薄い作りにしてみようといった発想が浮かんできます。

結HOME▼

1974年 大阪に生まれる
2001年 福知山高等技術専門学校にて木工を学ぶ
2002年 注文家具会社、木工所などの職人として多数のオーダー家具を手掛ける
2005年 京都府美山町に工房設立
2006年 第5回 暮らしの中の木の椅子展 入選
2008年 第6回 暮らしの中の木の椅子展 入選
2009年 第83回 国展 入選
2010年 「第57回 日本伝統工芸展」入選
2011年 「第40回 日本伝統工芸近畿展」入選
2011年 「古谷禎朗 家具工芸展」近鉄百貨店にて開催
2011年 小海町美術館「フィンランドと日本の生活デザイン展」に招待出品
2011年 「第13回伝統工芸木竹展」入選
2011年 「第85回 国展」国画賞受賞
2011年 京都 結にて陶芸家松川和弘氏と二人展
2011年 横浜山の上ギャラリーにて「私の椅子展」に出展
日本工芸会準会員 国画会会友

風雪に耐えた木の強さや温かさがにじみ出る木目の美しさ。それを際立たせるのが古谷さんの「拭き漆」です。塗って磨くという工程を何度も何度も繰り返し、木目を宝石のように輝かせます。アートのようでありながら実用品でもある。そんな家具を作る古谷さんに、木の魅力などについてうかがいました。

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実用性に芸術性も加味し、いつまでも「作り続けたい」

――今後の展望は?

ずっと「作る人」であり続けたいです。ベテランになったからといってデザインやプロデュースに専念するのではなく、自分自身で作るというスタイルは崩さずにいたいのです。彫刻や絵画などの純粋美術も好きなので、今後は美術やアートの要素も取り入れていきたいです。と言っても完全なオブジェではなく、実際に使うという前提でメッセージ性もあるもの。そういうものに取り組んでいきたいです。



Frutani Yoshio

古谷 禎朗